コロナ禍で航空需要が急減した2020年以降、全国の空港は厳しい経営をせまられた。その代表格が19年に民営化した福岡空港で、巨額の債務超過に陥った。それでも続けた設備投資が、訪日客増加などの追い風を取り込んで業績は急回復に向かう。専門家は「民営化の長所が出た」と評価する。
「276億という債務超過を抱えている。なるべく早く解消するように利益を上げていきたい」
福岡空港の運営会社、福岡国際空港(FIAC)の田川真司社長は5月8日、決算発表の記者会見で力を込めた。
債務超過276億円の福岡、一転初の黒字見込む
福岡空港は国管理の空港だが、運営権を民間事業者に売却するコンセッション方式で19年4月に民営化された。管制業務は国が担うが、滑走路や空港ビル、駐車場などを一体運営し、着陸料も柔軟に設定できる。
ただ、取得した運営権の対価は30年分で4460億円と巨額だ。そこで一時金を216億円に抑え、毎年度153億円を払う契約を国と結んだ。
そこにコロナ禍が襲い、民営化から1年も経たず苦境に立たされた。旅客数は半分以下に落ち、収入が激減。国への支払いが重く、20~22年度の3年間は支払い猶予を受けた。20年度以降は負債が資産を上回る債務超過の状態が続き、25年3月では債務超過額が276億円に上る。
コロナの間も続けた投資、6年で700億円規模
それでも続けたのは、空港の魅力を高めるための投資だ。一部は後ろ倒ししたが、24年度まで6年間の設備投資額は700億円規模。国が整備した2本目の滑走路の利用開始に合わせ、今年3月に国際線ターミナルを拡張。保安検査の処理能力を2倍に高め、直営店の増収効果が大きい免税店エリアの広さを4倍にした。
苦境の中での投資が、今花開こうとしている。
訪日客の回復で、福岡空港の…